2014/08/07

DIGICheck: Global Record 実践解説

突然ですが、皆さまGlobal Record使っていますでしょうか?

Global Record(グローバル・レコード)とは、高い安定性と音質を誇るマルチ・チャンネル録音ソフトウェアで、接続されているRMEインターフェイスの全チャンネルを簡単に録音できる無償のオプション・ソフトウェアです。既にGlobal Recordを使っている方はその便利さをご存知だと思いますが、そもそもGlobal Recordってなに?という方もまだいらっしゃるかもしれませんので、このブログではまずその辺りからご説明していきたいと思います。

Global Recordは、DIGICheckの機能のひとつ

まず最初に、RMEのオーディオ・インターフェイス全ユーザーが無償で利用できるメーターリング・ソフトウェア・パッケージ「DIGICheck」をご紹介します。
DIGICheck はデジタル・オーディオ・ストリームの計測、解析を行うために開発されたRME独自のユーティリティー・ソフトウェアです。DIGICheck の操作は、画面をご覧いただければすぐにでも使用可能なほどシンプルです。にも関わらず、非常に精度の高いプロフェッショナルなオーディオ計測・解析が可能です。そして、DIGICheck はあらゆるソフトウェアと並行して使用することができます。例えば、Pro ToolsやCubaseといったDAWソフトウェアを使用しながら同時に DIGICheck を立ち上げてオーディオの計測・解析を行う事ができます。

Macでお使いの場合:設定方法はコチラ

別途購入が必要な有償プラグインにも引けを取らない非常に精度の高いレベルメーターやスペクトラム・アナライザーなどが無償で使えるだけでも十分お得なのですが、WindowsでRMEをお使いの場合は、なんと、それらに加えてマルチトラック・レコーダーであるGlobal Recordを使うことができるのです!
※Global RecordはWindows版のみの機能となり、Mac OS Xをお使いの場合Global Recordをお使いいただけません。ご了承ください。なお、Boot Campには対応しておりますので、Macユーザーの方はBoot CampにてGlobal Recordをお使いください。

Global Record:背景

DIGICheck は、入力されるすべての信号をリアルタイムで、かつ低CPU負荷で監視できます。またASIOを使用して、表示される全チャンネルから全オーディオ・データを受信します。そこで「これらのデータを直接ディスクに書き込んで、シンプルでCPUに負荷のかからない録音機能を実現できないか」と考え、開発されたのが Global Record です。
DIGICheckのGlobal Record機能は、パフォーマンスの低いPCでも信頼度の高い録音を実現します。したがって、特にノートパソコンでのモバイル・レコーディングには最適です。CPUへの負担、そしてハードドライブへの負担が極限まで小さいため、録音中にエラーで止まるリスクが非常に低く、鉄壁の安定性で動作します。特にMADIのインターフェイスが接続されているような場合、64チャンネル(またはそれ以上も!)のすべてを、チャンネル別に非常に低い負荷にて録音することが可能です。
  例えば、ライブ会場でPA卓と直接接続しての録音、そして、マイクプリを使っての録音など、様々なパターンが考えられますが、ここでは、いくつかの接続例を紹介したいとおもいます。

MADIでの接続例

MADI搭載のPA卓がある場合は、PA卓と直接MADIケーブルで接続するだけで、簡単に最大64ch(96kHzの場合32ch)までのレコーディングが可能です。インターフェイスをMADI3系統を扱うことができるMADIface XTにすれば、さらに多くのチャンネルをレコーディングすることが可能です。
マイクプリを使用してのMADIレコーディング・システムの一例です。マイクプリは最大64ch分まで拡張することができます。同じくインターフェイスをMADIface XTにすれば、さらに多くのチャンネルをレコーディングすることが可能になります。

Fireface UFXとマイクプリを使った接続例


Fireface UFXとOctamic XTCをADATケーブルで接続すると、マイクプリx20ch、ライン入力x8chのシステムを組む事ができます。この場合、Fireface UFXDURecを使うと、バックアップの録音も簡単に行うことができます。さらにヘッドフォンも計6ポート使用できるため、様々なシチュエーションに対応が可能です。
このように、RMEのインターフェイスとマイクプリを組み合わせることで、非常にコンパクトで柔軟性に富んだレコーディングシステムを構築することが可能です。
もちろんGlobal RecordもDURecも2時間を超える録音が可能で、ハードディスクにスペースがある限り録音を続けることができます。

Global Record:高い安定性の秘密

低CPU負荷、そして鉄壁の安定性の秘密は「インターリーブ・ファイルでの録音」にあります。一般的なDAWソフトウェアは、通常チャンネル毎に個別のオーディオ・ファイルを作成しますが、Global Recordは、すべてのオーディオ・データを1つのストリーム、いわゆる「インターリーブ・ファイル」として一回でディスクに書き込みます。従って、非常にPCへの負担を少なくすることができ、結果とても安定した動作が保障されるということになります。

Global Record:作業の手順

もちろん、インターリーブ・ファイルのままでは編集やミックスができません。でも、ご安心ください。Global Recordには、録音終了後、個々のチャンネルをモノ・ファイルとして書き出すオプションも用意されています。各チャンネルのファイルに分割することによりDAWソフトウェアで編集・ミックスできるようになり、通常のDAWソフトウェアでレコーディングした時と全く同じ状態でその後の編集・ミックス作業を行うことができます。また、Pro Toolsなど、インターリーブ・ファイルに対応したDAWソフトの場合は、そのままソフトからインターリーブ・ファイルをインポートしますと、DAW内にてモノ・ファイルとして自動展開されますので、そのままシームレスに編集の作業を行うことができます。 
では、実際に、Global Recordでの、設定、録音、DAWでの編集までの流れを順追って確認してみましょう。
今回は、MADIface USBを接続してみます。
もちろん、すべてのRMEインターフェイスで同じ作業を行うことができますが、表示されるチャンネル数は、接続されているデバイスによって異なります。 まず、DIGICheckを起動したら、Functionメニューから、Global Recordを選択します。
次に、Optionメニューから、Input Device Setup…を選択し、デバイスとデバイスのどの段から入力シグナルを録音するのかを決定します。通常は、デバイスのInputを録音する形になると思いますので、下記のように設定してください。
デバイスの設定が完了しましたら、次に、一時ファイルの書き込みフォルダを指定します。
まず、デスクトップに新規フォルダを作成し「Global Rec Temp File」フォルダ名を設定します。一時ファイルの書き込みフォルダは、外付けハードドライブにも作成できます。その場合も、必ずフォルダ名を半角英数で「Global Rec Temp File」としてください。
一時ファイルの書き込みフォルダを作成したら、Global RecordのOptionメニューから、System Settings…を選択してください。
このウィンドウでは、レベルメーターの反応速度を変更したり、レベルメーターの色を変えたりできるのですが、重要なのは一番下の「Record」と書かれた項目です。 項目内のSet Directory for Temporary File…というボタンをクリックして、表示されたウィンドウから、先ほど作成した一時ファイルの書き込みフォルダ:「Global Rec Temp File」を指定してOKをクリックします。
これで準備は完了です。
あとは、入力信号が来ている事を確認して、Global Recordのレコードボタンを押すだけで、録音が始まります。
ちなみに、Global Record画面の下に配置されているカウンター類ですが、それぞれ下記の内容を表示しています。
Time: 録音時間を表示
Disk: ディスクの空きスペースから算出した録音可能時間を表示
HD Load: 現在のハードディスクの負荷
※録音中には、画面のソロとミュートボタンは使えません。これらのボタンは再生時のみの機能となります。録音時に各トラックをソロで確認したい場合は、TotalMixにてその作業を行ってください。
録音が終わったら、停止ボタンをクリックします。
一旦、再生を行い、録音内容を確認してみましょう。
内容が問題ないようでしたら、Saveボタンをクリックして、保存を確定します。
Saveボタンをクリックするまえに、その隣にあるClearボタンをクリックしますと、現在一時ファイルとしてフォルダに書き込まれているオーディオ・データが削除されてしまいますので注意してください。
Saveボタンをクリックすると以下のような画面が表示されますので、ファイル名と保存先を指定して、最後に「保存」をクリックしてください。
すると次のような画面が現れ、保存するオーディオファイルのフォーマットを決定します。
画面のFile type/File splittingの項目をチェックしてください。
インターリーブ・ファイルのままで保存したい場合は、Multi channel fileを選択します。
モノ・ファイルでチャンネル別に保存したい場合は、一番下のSingle channel filesを選択します。
なお、それぞれの選択によって、右側の「Req. disk space」容量が変化します。この部分は、選択したフォーマットで保存した場合、どのくらいのディスクスペースが必要になるかを表示しています。[Multi channel file]を選択した場合は0MBと表示されますが、これはエラーではなく、単に保存前の「一時ファイル」をインターリーブ・ファイルのまま保存するため、追加の空き容量は必要ないという意味になります。また[Multi channel file]以外を選択した場合は、「一時ファイル」からそれぞれのファイルへ書き出す作業が生じるので、長時間レコーディングした後では非常に時間がかかる可能性があります。ライブ会場の現場では一旦Multi channel fileとして保存しておき、後日時間が取れる時に個々のチャンネルへ書き出すのがよいでしょう。
希望するフォーマットを選択し、画面の[OK]ボタンをクリックすると、処理が始まります。
長時間の録音をした場合は、それに応じてある程度の処理時間がかかりますので、処理が終わるまでは、PCの電源を落とさないようにしてください。
続けてGlobal Recordで録音を開始する場合は、一旦、現在Global RecordにLoadされているオーディオファイルをClearする必要があります。画面から[Clear]をクリックしてください。
では、次に、編集やミックス作業の為に、DAWソフトへオーディオをインポートする部分をご説明します。
Single channel filesとして保存を行った場合:
個別ファイルがチャンネル数分作成されていると思いますので、それらを、お好みのDAWソフトウェアにインポートし、編集やミックスを行ってください。
Multi channel fileとして保存を行った場合:
この場合、インターリーブ・ファイルとして保存されています。つまり1本のオーディオファイルの中身が録音したチャンネル数分に分かれて記録されています。このままですと個別トラックの編集やミックスができませんので、モノ・ファイルに分割してDAWソフトウェア上に展開する必要があります。ここでは、ミックスの標準ソフトとして利用者も多いPro Toolsと、音質に定評のあるStudio Oneとでその流れを確認してみましょう。

Pro Toolsへのインポート:

まず、Pro Toolsを起動してセッションを作成します。
セッションを作成したら、ファイルメニューからインポートオーディオ…を選択します。
画面上にて、先ほど保存したインターリーブ・ファイルを指定し、追加ボタンをクリックします。
最後に完了をクリックしますと、次の画面で、ファイルの処理方法を聞かれますので指定してください。
新規トラック:チャンネル数分の新規トラックが作成され編集画面上にクリップが表示されます。
クリップ リスト:一旦クリップリストへとインポートされます。編集画面上にクリップは表示されません。編集画面へは、クリップリストからドラッグ&ドロップでクリップを移動します。
場所:新規トラックを選択した場合は、クリップの配置を、セッションスタート/ソングスタート/選択範囲/スポットから選択することができます。
※ソングスタートは、ソングスタート位置を設定している場合のみ利用可。

Studio Oneへのインポート

ソングを作成したら、画面右のブラウザー・セクションを開き、保存したインターリーブ・ファイルを表示します。
先ほど保存したインターリーブ・ファイルを指定し、ファイル上にて右クリックをすると、メニューが表示されます。
メニューからモノファイルに分割を選ぶと、インターリーブ・ファイルの保存先と同じロケーションにチャンネルごとにモノ分割されたオーディオ・ファイルが生成されますので、あとは、それらをドラック&ドロップでStudio Oneにインポートするだけです。

いかがでしたでしょうか?
今後ますます需要が増えてゆくだろうと予想されるライブ・レコーディングに対して、少しでもお役に立てる情報になっていれば幸いです。
もし、本記事に関しまして不明な点、または、Global Recordを使ったライブ・レコーディング・システム構築のご相談等ございましたら、下記よりお問い合わせください。